遠い昔、僕は美しい少女と約束をした。必ず戻ってきて、閉じ込められた彼女を助けると誓った。
「兄さま、兄さま」
 本当に愛していた。今でも思い出せる。背中をたゆたう白い髪と、闇を自在に見とおす赤い瞳がいとおしかった。何でもしてやれると思っていた。
「起きて。目を覚まして。せっかく戻ってきたのに。死なないで」
 でもそれは、過去の話だ。僕はもう、この場所に来てはならない。みんなのために。これから見つける、新しい恋人のために。彼女のことは忘れなくてはならなかった。
「起きて、早く起きて」
 一番下の妹は約束の子として産まれてきた。愛してはならなかった。彼女のために、ここはもうあけ渡さなくてはならない。
「兄さま!」
 僕は目を開けた。夢で見たのと同じ少女が、僕の顔を覗き込んでいた。

――「DARKWALKER」P22より一部抜粋――

  

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