最終日のこと

 ザイナスが到着したのは最終日の朝だった。彼は楽器を持ってだだっぴろい広場をひとしきり歩き回り、やっと目当ての場所を見つけた。
「久しぶりだな、キール」
 ポカンとしたのはキール・デリである。リックラックは遅いので、たいていは彼が先に来て場所の準備をしていた。
「ザイナス? なんでお前ここにいるんだ?」
 あっはっは、とザイナスは屈託なく笑う。
「放送を見た」
「ああ、あれか」
 キール・デリは納得した顔になった。ブラッキィがとことこと出てくる。そしてザイナスのことを見て言った。
「おまえはあのどろぼうだな。またきたのか」
 ザイナスはいや違うんだ、と丁寧にブラッキィに説明する。こういうところが育ちのよさであろう。
「どろぼうじゃない、キールの友達だ。それにザイナスって名前なんだ。泥棒って呼ばないでくれ」
「わかった、ざいなすだな。おれはぶらっきぃだ」
「よろしくな、ブラッキィ」
 ザイナスはぽんぽんとブラッキィの頭を撫でて、キール・デリに言った。
「面白そうなことをしているから来たぞ。俺も入れろよ。ギター弾きはどこなんだ」
「まだ来ない。あいつ遅いんだよ」
「そうか」
 キール・デリはブラッキィに数枚のキャベツを渡し、自分も石畳に座り込んでリュックからサンドイッチを取り出した。
「少し弾いててもいいぞ。どうせあと三十分は来ないからな」
 その様子を見てザイナスがびっくりしたように言った。
「朝飯を食うようになったのか」
「怒られた」
 もそもそとサンドイッチを食べながらキール・デリは答えた。
「俺、検査してもらったんだよ」
 彼はじゃら、と音を立ててプレートをつまみ上げ、またすぐに服の中に戻した。
「結果はまた話すけど……栄養失調だって言われてさ。もし倒れて病院に運ばれたら大事になるって。絶対に血液検査とかするから、そこで引っかかったら終わりだってさ」
「終わりって、何のことだ」
 サンドイッチがなくなったので、彼は入っていた紙袋をまたリュックにしまった。ついで楽器ケースを取り上げてふたを開け、中を見る。
「人間って何だと思う、ザイナス」
「俺が知るか」
 唐突な質問にザイナスは面食らった。キール・デリは楽器を持って立ち上がり、音の調整を始める。
「じゃあ亜人種って何だ」
 ほぼ自問自答に近いことにザイナスは気づいた。
「バカで何も知らなくて、便利で、使い捨ての道具か? だけど、俺は言える立場じゃないけど、バカだって生きてんだよ」
 何を見てきたのかと思ったが、ザイナスは黙っていた。キール・デリの表情が今までにないほど深刻だったからである。
「先に少しやらせてくれ」
 ああ、とキール・デリはうなずいた。ザイナスは自分の楽器ケースを開け、天使の彫刻がついたヴァイオリンを取り出した。

 遅れてきたリックラックは、自分の場所にたどり着くのに苦労していた。広場はすでに人でいっぱいであり、しかも近寄るにつれて人ごみが濃くなっていくのである。こんなことは今までになかったので、彼は先に来ているキール・デリにどやされると思ってひやひやしながら歩いていた。
 やっと自分の場所にたどり着いたが、まわりをぐるりと人が囲んでいて中に入れない。ところどころヴァイオリンの音が聞こえてくるので先に一人で演奏しているのだろう。仕方がないことだとリックラックは思った。人ごみの隙間を探し、声をかけながら奥に進む。
 しかし彼は、聞こえてくるヴァイオリンの音がいつもと違うことに途中で気がついた。何が違うのかはっきりとは言えなかったが、明らかに別人の音楽である。リックラックは懸命に人ごみを抜け、どうにかしてその最前面に出た。
「……誰だ?」
 どこかで見たような気がしたが分からなかった。持っている楽器も雰囲気もキール・デリとはまったく違う。そしてキール・デリといえば後ろに座って、その男が演奏しているのを眺めているのだった。
 リックラックが登場したのを見て、キール・デリは手招きをした。彼は後ろをまわり、楽器を背から下ろしてキール・デリの隣に座った。
「すいぶん遅かったな」
「いや、混んでて……すまない」
 やっと落ち着いたので、リックラックは平然と座っているキール・デリに聞いた。不審な気持ちがめいっぱい表面に現れてしまっていた。
「あれ、誰だ。なんで勝手にやらせてんだよ」
 横目でキール・デリが見る。お前いつも遅いよな、そういう表情であった。
「ザイナス・カミングだ」
 その名前がリックラックの中で意味を持つまで数秒かかった。えっ、とキール・デリのほうを見る。
「お前と合わせたいんだってさ。やたらと遅刻してくるんじゃねえよ」
 さらにその言葉の意味がリックラックに染み込んでくるまでに数十秒かかった。
「え……? なんで?」
「面白そうだから入れろってさ。ま、あいつはこういうのやったことないし、いいだろうと思って」
「……知り合い?」
「まあな」
 ザイナスが演奏を終え、一礼をして下がる。置いてある楽器ケースには、小銭ではなく札がいくつも入っていた。拍手はいっこうに鳴りやまず、人垣は引く気配がない。
「やりづれえなあ、もう」
 キール・デリは楽器を引っつかみ、その場から立ち上がる。入れ替わりにザイナスが下がってきて、彼のいた場所に座った。 
「繋いでおくから合わせておけよ。ザイナスのほうがピッチが高いからよく調整しとけ」
 にやっとザイナスが笑った。
「まじめにやれよ、キール」
「お前の後じゃ手抜きできねえよ」
 キール・デリは立ち去る。ザイナスは隣に座っている若者にあいさつをした。
「お、来たのか。俺はザイナス・カミング。よろしく頼むよ。名前は?」
「り、リックラック、です。よろしくお願いします」
 そうか、とザイナスは笑った。
「じゃ、やろう。楽器を見せてくれよ」
 リックラックはあわてて大きな楽器ケースを開け、自分のギターを取り出した。

 午後になってキール・デリの元にもう一人来客があった。ケンタである。二時をまわったくらいでちょうど人も引き、三人とも遅い昼食を取っているところだった。
「こんちはー。キールさんいる?」
 にこにこと手を振って近寄ってくる小柄な少年に、あとの二人はすっかりだまされてしまった。
「キール、お客さんだぞ」
「ちょっと待ってて」
 その時キール・デリは後ろを向いてリュックの中を整理していた。今日の稼ぎ分をしまう袋か何かないかと探していたのである。言われて彼は振り向き、げっ、と言ってしまった。
「キールさん、久しぶりだね。ここ広くてさあ、すごい探しちゃったよ」
「……何しにきたんだよ」
 笑顔のまま少年は答える。
「献血のお願い」
「嫌だ」
「そんなこと言わないでさ、少しでいいよ」
「絶対ダメだ。まだ死にたくない」
 キール・デリの半端ない拒否っぷりと一歩も引かない少年のやりとりに、後の二人はけげんな顔になった。とりあえずザイナスが割ってはいる。
「キール、せっかく来てくれたんだからあんまりそっけなくするなよ。君、名前は?」
「ぼく、ケンタっていいます。キールさんがテレビに映ってたんで遊びにきました」
 礼儀正しくはきはきと少年は答えた。ほー、と感心したような声がザイナスとリックラックから上がる。
「きちんしてるな」
「いい家の子なんだろう」
 その隙にキール・デリはこっそりと逃げ出そうとしていた。そこをリックラックに見つかり、ザイナスに連れ戻された。
「どこ行くんだ」
「いや、金を入れる袋を見つけてこようと思って」
 キール・デリの不審な態度に、とうとうザイナスが言った。
「キール。もしかしてお前、何かあの子にやましいところでもあるのか?」
「ない。絶対ない。だから分かってくれよ」
 さらにザイナスは詰め寄る。
「ないならお前の態度はおかしいぞ。だいたいせっかく来てくれたのに……」
 ザイナスがさらに言いつのろうとした時だった。ケンタが鋭く警告を発した。
「待って。キールさん、誰か来る」
 逃げ出そうとしていたキール・デリは、それを聞いてケンタに向き直った。ざっと自分達の居場所を見回し、リックラックにむき出しになっていた小銭を隠すように言った。
「本当か」
「うん。五、六人かな。目的はわかんない」
「金だろ。派手にやりすぎた。にしても多いな」
 ち、とキール・デリは舌打ちをしてこう言った。
「ザイナスは楽器を持って隠れててくれ。向かいのカフェがいい。ブラッキィも連れて行ってくれ。ちょっとやばいからな」
 楽器をケースにしまったザイナスは、あわてて大きな手でブラッキィをつかみ、自分の上着でくるんだ。
「こんなこともあるのか。大変だな」
 言いながら立ち上がる。キール・デリは謝った。
「せっかく来てくれたのに悪いな。だけどその楽器を壊されるとまずいだろう。お前だって忙しいんだしさ。ちょっと外れててくれ」
「分かったよ。気をつけろよ」
 キール・デリは指示を続ける。
「リックはここにいろ。それと札をそうだな、五枚くれ。追い払う。ケンタは悪いがやばくなったら少し手伝ってくれ」
「貸しだね。じゃ、ザイナスさんを送ってくるよ」
 ケンタは小石を二つくらい拾ってそう言った。あんまり石ないんだね、ときょろきょろする。そして、あ、と言ってリュックから投げっぱなしになっていた弦を見つけた。
「あれ貸して」
 キール・デリは拾って手渡す。ケンタは糸巻きから少し出してみて、ちょうどいいや、と言った。
「ガット弦だからな。高いんだぞ」
「わかった。すぐ戻るよ」
 残ったのはキール・デリとリックラックだけになった。ほどなくして数人の足音が聞こえてくる。キール・デリは下を向いて楽器をいじっていたが、リックラックのほうは緊張を隠せない。
「おい」
 声をかけられたので顔を上げる。あくまでも平然と受け答えをしなくてはならない。怯えが伝わればそれだけふんだくられるからだ。
「なんだ。今は休憩中だぞ」
 町のごろつき連中ではなかった。もっとやくざな空気である。前面に三人、後方に二人だ。アジョワンの犬使いに襲撃された時とよく似ていた。あの時はもう一人加勢がいたが、今回は二人だけだ。どこまで通用するか分からなかったが、それでもキール・デリは楽器を置いて数枚の札を取り出した。
「これでいいか。今日で終わりだから大目にみてくれ」
 先頭の男が札を返してきた。
「そうじゃない」
 あと二人がキール・デリの前にやってくる。彼は札をリックラックに渡し、後ろに下がらせた。
「じゃあなんだ。楽器は渡せねえぞ」
 ぱっと見ただけでは分からないが、彼の楽器は瑚老人の作である。闇に流せば億単位の値がついた。彼らがそんな目ききだとは思えなかったが、キール・デリは一応こう言った。
「そいつもいらない」
 男の視線がキール・デリの襟元にいった。手が伸びてきて、シャツの中のチェーンを引き出そうとする。彼は座ったままあとずさった。
「それはプレートだな」
 キール・デリはしらを切り通すことにした。リックラックは彼の後ろで動けなくなっている。
「これか。変なやつから買ったんだよ。フラフラしててやばかったぞ」
「いいや」
 男は彼の前から動こうとしなかった。
「お前、#5だろう。それにはお前の名前があるはずだ」
 空気が凍るような間があった。 
「……知らないな。何の話だ」
 後方に控えていた二人の姿が見えないことに、キール・デリは気がついた。ケンタが戻って来たのだ。場所を変え、彼の助力を求めることにする。
「リック、楽器を預かってくれ」
 青ざめているリックラックに楽器ケースを渡す。
「どこへいくんだ」
 キール・デリは立ち上がった。
「このおっさんに説明してくる。もう商売は終わりだ。ザイナスが戻ったら場所をたたんで移動しろ」
 そして最後にこう言った。
「その楽器なくすなよ。そこらじゃ買えねえんだ」
「あ、ああ」
 彼は男三人を従え、石畳の広場を歩き出した。

 まっすぐに表通りを抜け、少し薄暗い裏道に出る。そこをさらに進んで壁に囲まれた袋小路の手前で立ち止まった。正面は高いブロックの塀、両脇は家の壁だ。片方は廃屋らしくガラス窓が破れていた。ついてくるのは三人、いずれも屈強といっていい雰囲気を漂わせている。
「ここでいいか」
 話しかけてきた男が正面に立つ。
「お前は#5だろう」
 キール・デリはプレートを外し男に放った。
「好きなだけ見ろよ」
 男がプレートを確認する。やはりな、という声が聞こえた。
「おっさんは誰だ」
「なぜ聞く」 
「ついていくのに誰だか分からなくちゃ困るからな」
 男の口からふっ、と声がもれた。笑ったらしい。
「変なやつだ。プレート持ちとは思えない」
「よく言われるよ」
 もう少し時間を稼がねばならない。で、と彼は話を続けた。
「おっさんはサラティア社の人? 俺、どこへ行くの?」
「なぜ聞く」
「なぜって、この後どうなるのか知りたいじゃん」
 キール・デリの背後は三方を壁に囲まれた袋小路だ。逃げられないと踏んで男は彼の話につきあうことにした。
「悪いがお前みたいなのを捕まえるだけが仕事だ。研究所に引き渡したその後は知らない。だいたいが一年ぐらいで死体処理場にいくようだが」
「げっ。そんなの嫌だよ」
 彼は男に背を向け、奥の袋小路に向かって走りだした。男が追っていく。その後をさらに残りの二人が追った。キール・デリはブロック塀に突き当たり、後ろを向いたままその場にしゃがみこんだ。
「少しましかと思ったが……亜人種なんてこんなものか」
 男が後ろ向きの彼の腕を取った。そのまま引き上げようとする。素早く反対側の腕が動いた。キール・デリは身を反転し、男の喉元にとがった長いガラス片をさしつけた。
「ガキの頃、よくこういう目にあったよ」
 先はわずかに皮膚に触れている。男がたじろいだ。
「いい大人がガキの売上を強請るんだ。ろくでもねえ」
 同時に塀の上から何かが飛んできて、彼らの後ろにいた二人に当たった。両方とも音を立ててその場に倒れる。
「ごめん、キールさん。なくってビー玉使っちゃった」
 男はその姿勢のまま、ブロック塀の上を見上げた。高い位置に小柄な少年の姿が見えた。
「殺すなよ。俺はそういうの嫌なんだよ」
 ケンタは塀の上から身軽に飛び降りてきた。ポケットから弦を取り出しするすると伸ばす。引っ張るとビーン、と音が鳴った。
「じゃあ代わるよ。これ使ってみたいんだけど、いい?」
 そういうと細い弦をあっという間に男の首に巻いた。キール・デリは窓ガラスのかけらを捨てる。
「知ってることがあったらしゃべっちまえよ。そいつ、加減知らずだからな」
「献血一回だよ」
 ケンタがうれしそうに言った。しぶしぶキール・デリは裏通りのすみっこでうなずいた。

 結果からいうと今回、キール・デリの献血はなかった。話を聞いたザイナスが彼らを探してやってきたからである。キール・デリとケンタは男から必要なことを聞き出し、プレートも回収し終わったところだった。半死半生の男は袋小路の奥に放置し、薄暗い通りから賑やかなおもてに出たところで彼らはザイナスと会った。
「キール、無事だったのか」
 血相を変え、息を切らしてザイナスは二人の無事を確認した。町中を走り回っていたらしい。裏通りで出会わなくてよかったとキール・デリは心底思った。それはケンタも同じだったようだ。
「あそこで会ったら引かれてたね」
「そんなんじゃ済まないだろ」
 あんな場面を見られたら引かれるどころの騒ぎではない。どちらにしてもザイナスのような人種と自分は違うのだ。
「これ、返すね」
 ケンタがポケットを探り、弦を返してきた。キール・デリは少し伸ばしてみて、また元通り巻いて自分のポケットに入れた。
「ま、使えるだろ。張ってみないと分かんないけどな」
 息切れがおさまってきたザイナスが聞いてきた。
「お前を連れてったやつ、あいつらどうしたんだ」
 こともなげにキール・デリは答える。
「全部やっつけた」
「やっつけたあ?」
 とんきょうな声でザイナスは聞き返してきた。
「よくあるよ。今回はちょっと数が多かったけど。リックもお前もそういうの慣れてないだろ。だから俺一人で行ったんだよ」
「いやだって……警察を呼ぶとか何かあるだろう。危険じゃないか」
 キール・デリとケンタは顔を見合わせた。
「それは思いつかなかったな」
「うん」
 所属する世界によってこれほど物事の認識とは違う。いや、俺さあ、とキール・デリは言った。
「ガキの頃からこうだったから、ああいうのは自分でやっつけるもんだと思ってたよ。そうか、警察を頼んでもいいんだな」
 ザイナスは脱力して道端に座り込んでしまった。今までの疲労が一度に出た部分もある。
「キール、お前……本当にもう路上はやめろ。そのうち死ぬぞ」
 ケンタがザイナスの腕を引っ張る。気づいてザイナスはよろよろとそこから立ち上がった。
「ザイナス、やめたら俺食っていけなくなるんだけど」
 だから、とザイナスはズボンについた汚れを払いながら言う。
「オーケストラに戻れって言っただろう」
 日が傾いて少し肌寒くなってきた。キール・デリは伸びをしながら言う。
「追い出されたって言ったじゃねえか。それより飲もうぜ。リックのやつ、今どこにいるんだよ」
「ウサギと一緒に前のカフェにいるぞ。売上も一緒だ。今必死に数えてる」 
 あっはっは、とキール・デリは笑った。
「じゃ、それで飲んで残りは三等分だ。それでいいだろう」
 ケンタが言った。
「ぼくそろそろ帰るよ」
「いいのか」
 うん、と彼は答えた。
「あんまり勝手に出歩いてると怒られちゃうからさ。今日だってあれ、ちょっとまずいんだ」
 ケンタが言っているのは裏通りの件のことである。キール・デリにもそれは分かった。
「ああいうの、駄目なのか?」
「勝手にやっちゃダメ。ばれたらぶっとばされるよ。じゃ、ぼく帰るね」
 ケンタはさよなら、と手を振って帰っていった。ザイナスがその様子を見て言った。
「いい子だな。頭もよさそうだし」
「そうだな」
「けど、あんまりまともじゃないな」
 少し考えてキール・デリは言った。
「ドロップアウト組だ。俺は聞いてないけど、たぶんいろいろあったんだろう。俺には想像もつかないようなことがさ」
 ふうん、とザイナスは意外そうな顔になった。
「お前に分からないんじゃ俺にはもっと分からないな」
「あんまり気にするなよ」
 リックラックが待っているカフェの前に着く。奥のテーブルを占拠して小銭を数えていたリックラックは、二人に気がつくとおおい、と手を振った。小銭の横にいたブラッキィも後ろ足で立ち上がる。
「終わったよ。リック、飲みに行こうぜ。ブラッキィもな」
 キール・デリはそう言うとカフェの奥テーブルに向かって歩いていった。

 

   

inserted by FC2 system